「リノベーションとは何? リノベーションとリフォームは同じ事では?」と思う人が多いのではないでしょうか。簡単にご説明すると、リフォームとは、老朽化した建物を当初の性能に戻すことを言い、クロスの張替え等の小規模な工事を意味します。 それに対してリノベーションとは、補修工事を行うとこまでは同じですが、リフォームとの大きな違いは、建物の持つ当初の性能以上の新たな付加価値を付け加え再生させることであり、スケルトン状態(躯体まるだし)から水廻りの移動・配管工事・間仕切り変更・構造補強・外壁の模様替え・建物用途の変更(コンバージョン)等の事を指し、工事の規模も大きくなります。 ここでは、リノベーションを考えている方や、リフォームを新にしようとしている方々に対して、リノベーションとは一体どう言うものなのか?リノベーションのメリットとは?等を含む今まで知らなかったリノベーションに関して様々な知識を得ていただければと思います。
現代の日本では年間でおよそ110万戸もの新築住宅が建設されています。日本は諸外国に比べて人口のわりに建物への投資が多いという特徴があるのですが、その中で中古物件の補修などに対する投資は極端に少なく、ほとんどが新築物件への投資になっています。 そうした習慣性の中から、現代の日本には一種の新築信仰のような住宅意識が広がっていて、新築物件に価値を見出し、20~30年ごとに建物を壊しては立て替える「スクラップ&ビルド」ということを繰り返してきました。この30年で実に7割強の建物が立て替えられているのです。
一方で既存の住宅の一割を超える件数が空家になっているというデータもあります。 この現象はすでに20年余り続いています。つまり、明らかに住宅の過剰状態に陥っているわけです。確かに高度経済成長期には都市の人口が増え、世帯数が増加したため、住宅件数は必要とされました。しかし、少子高齢化による人口の減少が社会問題になっている今でも同じように新築住宅を建て続けているのです。これでは住宅の供給過剰状態に陥ることは当然と言えます。 現在建てられている新築住宅は、そこに住む人のためというよりも、経済活動の一つという側面が色濃くなっているように感じられてしまいます。
平成18年6月に「住生活基本法」が公布・施行されました。住生活基本法は、わが国のこれまでの「住宅の新規供給の確保」を中心とした政策を転換し、住宅市街地における居住環境を含めた「良質な住宅ストックの形成」を通じて豊かな住生活の実現を図ることを目的として制定されました。 「既存住宅の流通シェア」13%(平成18年)→23%(平成27年) 「住宅の利活用期間」約30年(平成15年)→約40年(平成27年)
今後、環境保護の観点からもリノベーション事業は不可欠となるでしょう。また法改正が追い風になり、様々なサービスが提供され、買う側にも売る側にも有利な状況ができあがり、消費者にとっては中古物件を購入することは身近なものになってくるでしょう。 このような中古物件に関わる動きが活発になると共に、新築物件に比べ安価で手に入れることができる中古物件を購入し、その後手直しを加えることで理想の住まいを手に入れようという考え方はさらに広がっていくでしょう。
リノベーションとは、既存の建物に大規模な改修工事を行い、用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりすること。建物の経年にともない、時代に合わなくなった機能や性能を、建て替えずに、時代の変化にあわせて新築時の機能・性能以上に向上させること。 具体的には、耐震性や防火安全性を確保し、耐久性を向上させる、冷暖房費などのエネルギー節約のため、IT化など変化する建築機能の対応・向上のために行われる。外壁の補修、建具や窓枠の取替え、間取り変更、給排水設備更新、冷暖房換気設備の更新などをいうようです。 また一方、情報誌や不動産売買等でうたわれる「リノベーション」「リノベーション物件」というのは、少し大きな意味を省き、単に「デザイン性の高いリフォーム」を指しているように思われます。簡単にいえば「デザイナーズ物件」見たいな表面的な使い方をしているようです。
現在では多様なインテリアやデザイン誌が公刊され、関心の高まりとともにその知識も豊かになり「一般的な分譲物件ではなく、自分で空間を創りたい」というニーズは増えてきています。 当然十分に資金があれば一戸建ての注文住宅を作ればいいのですが、そこまでも出来ない人にとって、つぎの選択肢は市場の分譲タイプしかありません。デザイナーズマンションなどももてはやされていますが、結局はステレオタイプのものとなってしまいオリジナリティのあるものは望めません。 そこで第三の選択肢とし、中古物件を購入し全面改修するという「リノベーション」に関心があつまっているのです。
リノベーション物件は、付加価値のついたデザイン物件で、資産活用できます。ストック利用による初期投資の軽減と低金利効果もプラスされ、賃貸として貸したり、利回り物件として転売したりすることにより利益を得ることができます。 市場の中では、いかに競争力のある商品を作るかが勝負の鍵となります。最近では様々な角度から、独自性の高い企画がなされるようになってきました。リノベーションの分野で特に目立つのは、ニッチなターゲット層に絞り込むと言う事でしょう。無難に手広くではなく、常識的には条件の悪いと判断されるものも、見方を変えることで付加価値を付けてしまうという方法です。たとえば、駅から離れているから静かとか、北側窓は景色がきれい。古い構造がレトロなインテリアとして使える。うるさい場所だから気兼ねなく演奏ができる。坂道はきついが景観は最高。といった具合になんでもデメリットをメリットにしてしまい、その中からニッチなターゲットを拾い出すという方法です。 その他には、1棟丸ごとコンバージョン(建物の用途変更)などの手法も使いながら、シェア住宅やシェアオフィス、バイクが入れられる部屋、ソーシャルアパートメントなどの企画なども行われています。
新築住宅に比べ、同じ立地であれば中古物件は安価に購入ができます。無理をしてローンを組みたくないと考える方や、新築と同額でより広い空間を手にしたいという方には良い選択肢でしょう。 無理のない資金計画は、ゆとりの時間を作ることにもつながり、スローライフな生活が実現できます。
利便性と経済発展に支えられ私達の国は豊かになりました。その反面、私達は環境に対する配慮を失い、同時にさまざまな問題を残してきました。「エコロジー」「ロハス」「スローライフ」「サスティナブル」と言った考え方は新しい時代の流れであり、住宅ストックの再利用は、産業廃棄物を減らす事にもなり、環境保護のためにも大きな貢献になります。
どんな人でも自分だけの個性というものを持っています。それはだれにも評価される必要のない個人的なものでありそれでいいのです。 リノベーションは、ステレオタイプの決められたパターンから選ぶのではなく自分の好きなデザインができます。
欧米ではリノベーションされた物件は、買ったときより高値で取引されることがよくあるようです。日本では固定資産税の償却期間を目安とした資産評価が主体となっているのが現状のようですが、今後住宅ストックを利用したリノベーションが活発に行われるようになれば、リノベーションしている物件とそうでない物件では当然資産価値が変わってくるでしょう。また、第三者機関による「既存住宅の性能評価」を受けることにより資産価値の向上をはかれます。(日本住宅保証検査機構)
マンションリノベーションの場合は、一旦スケルトンの状態にすることにより見えなかった部分たとえば旧設備配管や電気配線、ガス管、防水等の状況をの欠陥を事前に修繕できます。 また戸建て住宅の場合では、耐震診断も事前に行うこともできます。
リノベーションを行う際に物件選びのポイントとして挙げられるのが、物件の状態になります。建てられた時代や施工の質、どのような過程を経てきたのかなどを見極めたうえで、リノベーションできる可能性がある物件をしっかりと探る必要があります。 それぞれのマンションによって管理規約が異なるため、しっかり把握してから工事を行わないとトラブルになります。更に建物の工法によってリノベーションしやすいマンションとそうでないマンションがあります。そのため、建物の状態を見極める鑑識眼とその中で何ができるのかという発想力、専門的な知識を持ち合わせた専門家のサポートが必要不可欠となりますが、その要点をいくつかまとめました。
簡単に判断する方法としては「外見判断」です。実際に行って見て、以下の点を確認します。
以上で住民の共同意識や管理会社の質がある程度判断できます。
構造体とプランニングの自由度 鉄筋コンクリートのマンションには大きく分けて2つの構造体があります。ひとつは柱・梁で支える「ラーメン構造」、もう一つは壁と床で支える「壁式構造」です。
マンションには必ず理事会が作る管理規約と使用細則があります。要点だけをチェックします。
以上が大きなポイントです。その他諸々ありますが大体基本的な決まりは同じなので、具体的になったら設計者や施工会社に確認してもらうといいでしょう。
ローンが組めるか。意外と大きな落とし穴が、資金計画の問題です。 中古物件の場合、ローンの借入れが新築ほど長期に組めなかったり、建物が借地権の場合はそれだけでローンが組めなかったり、職業や収入をもとに金融機関が審査します。それが通って初めて購入可能という話になりますので、よく確認する必要があります。基本的には不動会社が面倒見てくれますが、前もって考えておく必要はあるでしょう。設計などを先走りすぎると無駄骨になる可能性もあります。
1981(昭和56)年6月1日以降に建築確認の許可が下りている建物は、耐震強度が、現在の新築建物と同じレベルで建てられています。税制上の優遇もあるので、新耐震基準を満たしている物件を選びたいところです。またマンションの場合、着工から竣工まで1年以上かかるケースがありますので、1982年竣工になっていても確認申請の許可が1981年6月1日以前の場合がありますので注意が必要です。ただし1981年以前に建てられている建物がすべて危険かというとそんなことはありません。基本的には中程度(震度5程度)の地震の際には倒れないように計算されています。新耐震以前の建物については、耐震診断をしているかどうかを管理会社や管理組合に確認するのもいいでしょう。マンションの耐震診断は数百万かかる場合もあるので、実際に行っているマンションはまだまだ少ないのが現状ですが、資産価値が高いマンションの中には耐震補強工事を行っているものもあります。
以上、様々な注意点はありますが、あまりこの点ばかりに関心を寄せすぎて疑心暗鬼になるのにも要注意です。こういった点は現状の把握程度として捉えたほうが良いでしょう。その物件に興味を持ったのには他に何か理由があったはずです。最終的には総合的に判断し、あるところでの決断は必要になってくるでしょう。